「ALWAYS 三丁目の夕日」

昭和33年の東京の町並みをそっくりそのまま再現したVFXがとにかく凄い。路面電車の走る大通りから臨む空の、なんとまあ広いこと(今は高層ビルで埋めつくされているからね)。この昔の風景を大画面で実体験するだけでも映画館に足を運ぶ価値アリ。特に、遠景の建設中の東京タワーがリアルだったなあ。もちろんCGだけじゃなく、すみずみまで気を遣って丁寧に作り込まれたセットや小道具があってこその効果なんだよね。
物語は先が読める展開ながらも、達者な役者さんが揃っているので安心して観ていられた。堤真一がちょっとマンガっぽいと思ったけど、原作も漫画だからいいのかな(未読)。普段は明るいお母さん(薬師丸ひろ子)が怒るシーンがあって、声にめちゃめちゃ迫力があって有無を云わさぬ力強さ、印象に残った。小雪は、綺麗なだけでなく、したたかで明るくて、薄幸ながらも負けない強さをまとった女性を好演。ほこりっぽい町並みの中で、そこだけ色が付いている感じだった。子役も良かったなあ、特に須賀健太堀北真希は初めて見たが、ほっぺたを赤くしていかにも田舎の娘っこという感じで、東北弁はまあまあだったけど、芯の強い働き者の娘役、可愛かった。吉岡秀隆はもう、演技が上手いのは分かっているので。情けない、でもどこか憎めないうらぶれた青年が、つかの間家族を持つ夢を見て、でも‥という終盤の展開には、泣かされた。出番は少ないながらも、三浦友和はすっかり味のあるいい役者さんになったなあと、往年の百恵・友和コンビの頃を知っている私は感慨深く。
「あの頃は良かったなあ」と昔を懐かしむのではなく、時代は変わってもそこに生きている人間は今も昔も基本的には変わらないのだという思いを強く持った。ささやかな日常の幸せを大切に元気に生きていこう、そんな前向きな気持ちになれる映画だ。
ちなみに自分は薬師丸ひろ子と同い年なのだが、子どもの頃はテレビこそあれまだ白黒で、近所をオート三輪が走っていた。お医者さんはカバンを持って往診に来てくれて、ほんとにぶっとい注射を打つんだよね。タバコ屋もあって、駄菓子屋もあって、家の前の路地は鋪装されていなくて男の子たちが爆竹で遊んでいたなあ。21世紀なんてはるか彼方、映画に出てきたみたいな未来都市をマジで想像してましたよ(笑)。

(映画館にて鑑賞)