『独白するユニバーサル横メルカトル』

053(小説)平山夢明『独白するユニバーサル横メルカトル』(光文社)
コンクリートの殺風景な部屋、血しぶきに染まる壁、足下に散乱する血まみれの肉片、でも窓越しにほおを撫でていった一陣の風は、森林の奥、静かに水をたたえる湖を渡ってきた風のように清々しく爽やかだった‥って、文章ど下手ですみませんが(汗)、私の読後感はそんなふう。表題作と「Ωの聖餐」「無垢の祈り」が特に好き。
平山さんは日本語を操る業師だ。「Ωの聖餐」なんて、凡庸な作家に書かせたらぐちゃぐちゃだのぬらぬらだの、安易なオノマトペの羅列に終わるだろうところを、的確な表現で情景を読者の脳内に完璧に再現するその才能たるや凄いと思った。「托卵」で平山さんの文章に惚れて以来、小説本の上梓を心待ちにしていたのだが、期待通りでとても嬉しい。余談だが、「推理作家協会賞受賞」の表題作はあまりミステリとは思えなかったなあ(あれ?)。