『10センチの空』

012 浅暮三文『10センチの空』(徳間書店
心が軽くなる、魔法のような小説。

実は私も、10センチほど空が飛べるんです‥といっても夢の中でだけですけど(笑)。ほんの少しだけ浮き上がって滑空する夢を、子どもの頃から時おり見るので、主人公の体感が手に取るように分かりました。ほんとに、空高くは飛べないんだよね、地面の上をすーっと滑るように進んでいく、でもとても気持ちいいんですよ。
蛇足ついでにもうひとつ。本作がミステリだったら、主人公はこの能力を実に有効に活用できるのではないかと。ほれ、「足跡を残さずに移動できる」(笑)。『雪密室』とか『スウェーデン館の謎』とか‥。