「鴨川ホルモー」

原作は大好き。『ホルモー六景』も既読。
なまじ思い入れのある小説なんで、「これはどうよ」な部分もあったけど、まず、ロケーションとキャスティングは二重マル。京都の四季折々の自然、広々とした鴨川べり、原作まんまの大学や神社、古くてごちゃごちゃした下宿、しっかり現地で撮ってて効果抜群(下宿はセットかもしれないけど)。「四条烏丸交差点の会」には鳥肌が立ったよ。
キャスティングもばっちり。特に濱田岳芦名星が良かったなあ。栗山千明も期待以上(最初の、誰も聞いてない自己紹介シーンが好き(笑))。山田孝之は普通の人役が実にうまくていいんだけど、映画の安倍の描かれ方には不満が残る(後述します)。佐藤めぐみも印象的。石田卓也は舞台版では安倍役だそうで、どう演じるんだろうね。荒川良々は本当に大学生に見えちゃうからすごい(笑、中途半端な語尾だけ京都弁はなくてもよかったけど)。石橋蓮司は謎すぎ。
ホルモーの対戦をまんま映像で見ると、ひたすらばこばこ殴り合う、かなり殺伐としたものだというのは新たな発見だったな。「あれはもしかして、おたま?」とか「わあ、これ、凡ちゃんのバイト先の制服ね」とか、気づかなかったけど「二人静」もいたのかも。ラストカットも原作(というか原作本)に対する愛をばっちり感じました。
原作未読の方々、「ゲロンチョリー」は出てきませんからね(笑)。
(映画館にて鑑賞)
以下、たたんでおきます。
 
 
まず、「これはちょっとなあ‥」な点。
・映画の安倍くん、イヤな奴すぎるって。鼻の彼女への露骨さとか、高村くんに対する態度とか。そもそも冒頭だって五月病じゃなく、貧乏が大変だったんじゃん(二浪なので実家に頼るのは避けたい、そこで新歓コンパに出まくって食費浮かして‥という話の流れ)。もうちょっと感情移入させてくれてもよかったのにー。
・肝心のホルモーが、まあ学生のやることだからあの程度という解釈の仕方もあるけど、まったく戦術らしい戦術がなくってさあ。やみくもに攻めて押しまくるか、おろおろ立ち尽くしてやられまくるか、の二通りしかないので、見ててつまんないったら。最後の一戦に至っては、個人の遺恨晴らしに式神が利用されているようで、腹すら立った。せっかくの凡ちゃんの見せ場がー。
・原作に高村くんがもらすシーンはないぞ。なにかで挽回させてやりたかった。気の毒。
・凡ちゃん、コンタクトはともかく、あのボリュームある髪を伸ばしたら、お菊人形か押し入れのちよになるよね(笑)。三回生のシーンもカツラでやればよかったのに。
・最後、「式神が指し示した新入生に勧誘の声をかけてた」というからくり、原作読んでない人は分かったのかなあ。
・べろべろばあの店長、なんで寝込んじゃってたの?
・千年の伝統ある競技の開始の合図が、「ファイト!」はないんじゃないかなあ。
良かった点。
・京都の町中を走り回ってホルモーやるのは面白かった。現地でちゃんと撮っただけのことはあったと思うぞ。
・十七条についても、原作通りにすると長くなるので、改変はやむをえないかと。
・ええと‥あれ、こんなもんか?(笑) キャステングがばっちり良かったって話は上で書いちゃったし。あ、早良京子について書いておこう。映画の安倍に感情移入できなかったのとは正反対に、芦名星演ずる彼女はけっこう人間味あふれてて憎めなかったのよね。一浪して京大入って、予告では「小悪魔」なんて紹介されてたけど、実際は不器用で彼氏とケンカばっかりで、自分のことしか見えてないんで周りの人間振り回しちゃうけど、わざとというよりはただおバカなだけという。
・鶴光はなんだったんだろう(笑)、ネット中継っていうのは今っぽくて良かったけど。