『ようこそ授賞式の夕べに』

大崎梢『ようこそ授賞式の夕べに』(創元推理文庫
これは面白いっ。成風堂書店×明林書房、まさかのコラボが実現。書店大賞(本屋大賞がモデルなのは明白)の実情も、元書店員の大崎さんならではのバランスの取れた描き方で、すごく納得。
二つのパートが交錯するまでは、片方の登場人物たちが知り得たことが、もう片方の登場人物たちには未知のことで、でも読者は両方平行して読んでいるので、「あれ、どうだったんだっけ?」と混乱してページを戻ったことが何度か。あと、本文中にも「積極的なのか消極的なのか、わからないやり方だ」「じっさいにはかなりいい加減で行き当たりばったり」と書いてあるので作者も自覚しているのだろうが、この二名の行動がイマイチしっくり来なかったのが、難点と云えば難点か。でも、覆面作家の正体、飛梅書店店長の謎の言葉、花ちゃんのひっかかるの行動など、本筋以外にも謎が盛りだくさん。いいもの読ませてもらいました。

ところでこの作品、本屋大賞にノミネートされなかったのはどうして??? 発売時期が悪かったのかしら(単行本は2013年11月上旬刊行、本屋大賞一次投票の時期と重なる)。せめて発掘本として大々的に広報活動してほしいものだ。