「ハサミ男」

原作は2000年に読んだっきり、あえて再読しないで映画館へ。で、観終わってから再読。
ほお、かなり原作に忠実な映画化だったんですね(チープだと思った警察の描写も、実は原作のまんま)。もちろん、小説ならではのネタは映画用にアレンジしてあるけど、原作を尊重する姿勢が充分に伺えたのは嬉しい。
音楽が素晴らしい(「マルサの女」の本多俊之。なんと、出来上がったフィルムを観ながら即興で音楽をつけたのだそうだ。さすが!)。あと、初めてトヨエツをいいと思いました(笑)。

(映画館にて鑑賞)
以下、ネタバレ含みます。
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初っ端からハサミ男の殺人シーンで幕が開くのが刺激的。映像では「男女が常に二人一緒にいる → どうも男は生身の人間ではないらしい」と徐々に分かってくる構成になっているのね。部屋に飾ってあった写真はミエミエではあるけど、伏線としては好きだな。「医師」ではなく最初から「父親」なんですね。父親の悲惨な死に様、主人公の彼に対する捩れた思慕、原作にはないそのあたりが付け加えられたことにより、ハサミ男の動機が分かりやすくなっていました(分かりやすけりゃいいってもんでもないけど、万人に受け入れられやすくはなるかな)。
残念だったのは、最後に登場する母親。あれは蛇足。あと、被害者が死ぬ瞬間に画面の色調が反転するところや、父親の自殺のシーンは、あまりにも手法が古くさい。予算の関係かもしれないが、もうちょっとスマートな表現方法があったのでは。
麻生久美子も良かったな。喋ってる途中で急に男言葉になるところが特に。意外とのぺっとした顔してて、その無表情さがサイコな犯人役にマッチ。でも「太っている」って設定はなくなっちゃってましたね。「女性は過度に「自分が太ってる」と思い込んでいる」こととトリックとの絡みが上手いなあと、原作を読んだ時は思ったものですが。
あ、原作は2003年の話、つまり近未来を描いてたのか。再読して気付きました。

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