『きつねのはなし』

015(小説)森見登美彦『きつねのはなし』(新潮社)
普通の言葉が素直に綴られているようでいて、どっこい並の人間には到底書けない文章だねこれ、上手いなあ。狐のお面、闇を跋扈する謎の獣、琵琶湖疎水、物語を彩る小道具もいい。ただ段落がやたらと短いので、読みやすいんだけどその都度現実に引き戻されるというか、むしろだーっと怒濤のごとく文章を連ねて、とんでもなく遠くまで連れていってほしかった気も。「果実の中の龍」が一番分かりやすかったかな。この本はいずれまたじっくりと再読したい。
   (文庫)