『ブラバン』

032(小説)津原泰水ブラバン』(バジリコ出版)
いきなり30名を越す登場人物表(しかも担当楽器付き)が出てきて面喰らったが、気にすることはないよ。高校時代と25年後の現在とが何度も交錯する構成なのに、本文を読んでるだけで自然に、大勢の人物の昔と今ががくっきりと頭に描かれる。決して書き過ぎない、最低限の言葉でこれを成し遂げた津原さんの手腕たるや、いやはや畏れ入りました。一章の長さも絶妙だし、行間からたしかに音が聞こえてくる。ネイティブな広島弁も効果抜群。笑えて泣けて、ほんとにいい小説。本屋大賞の候補にならなかったのが、とても残念。