「KIDS」

小池徹平が可愛い。むちゃくちゃかわいい。もーどうしましょって云うくら(以下略)。
主人公たちの年齢(原作では小学生)を大幅に変更したわりには、細かいところがけっこう原作に忠実で、そのせいでいろいろ無理が生じているように思いました。あんだけワイルドでばりばり社会人の玉木宏が、友達がとか父さんがとか云っても、なんか合わないよね。せめて高校生同士の話にすれば良かったのに。
それから、舞台は架空の町に徹して欲しかったな。橋の手すりや病院にしっかり「木更津」と書かれてるのが映っちゃってたのは、興ざめ。
栗山千明は、タランティーノの映画に抜擢されるほどの、なんというかもっと貫禄ある女優さん、って感じなのかと思ったら、すごく線の細い女の子を好演。でも、顔の傷を気にしてる子が、客商売はしないよな普通(これは原作もそうなんだけどね)。
途中までは正直退屈だったけど、事故のシーンは(唐突ではあるけど)かなり見ごたえあり。予告で見せられていたにもかかわらず、アサトにがっつり泣かされました。槇原敬之の歌も良かったです。
(映画館にて鑑賞)

で、「ここはちょっとどうなのよ」的なことを以下ずらずら書いてます。なーんか、細かい詰めが甘くてもったいないんだよね。結末にも触れていますので、未見の方はご注意あれ。
・原作は主人公が小学生なのでいいんだけど、映画は設定を変えたので、「KIDS」という題名の意味するところが不明に。「傷」の同音異義語ってこと?アサトが無垢な少年だってこと?
・アサトの「物を触らずに動かせる能力」は必要だったのか? それがあるなら倒れたバスを起こせばいいのにね(笑)。まあ、あれは重くて無理だったんだろう(ということにしておこう)。
原作では「傷を移動させる能力」だけなんですよ。しかも、タケオの傷口をふさごうと無意識に触って初めて自分の能力に気づくという。映画でも、アサトがタケオの傷を初めて癒すシーンで同様のセリフがあるんだけど、ちょっと待て。傷を移動させられることは、母親に刺された時点ですでに知っていたはずなんだよね、映画のアサトは。ううむ、矛盾してるぞ。
物を動かせる能力っていうのは、母親の殺人の動機を分かりやすくするために付け加えたのかなと。つまり、アサトが赤ちゃんの頃、彼の周りで起こるポルターガイスト現象のせいで、彼と母親への周囲(アサトの父親も含めて)の態度がどんどん冷たくなっていき、追い込まれた母親はついに夫を殺してしまった。彼女は事の元凶となった息子をも刺すが、助けを求めたアサトに触られたために傷が移動してしまい(この時アサトは傷を母親に移動させようという意思はなかったように思う。ただ、痛みから逃れたい、生きたいと願う彼の身体の欲求が強すぎて、ああいう結果になってしまったんではないかと)‥となるわけだが、これが「赤ちゃんが傷を移動させるのを見て」だとたしかに不自然。でも、できれば「傷移動」オンリーでなんとか物語を作って欲しかった。
・母親が逮捕された後、アサトも母親を刺した罪で少年院かなんかに入ったんだろうね。だから高校生の今、保護監察下にあるんだろうと。その間能力はたぶん封印していたんだろうな(あくまで想像)。自由の身になり、母親のいる町に来て気持ちが緩んでつい、塩のビンを動かしてみちゃったのかな。
・包丁やアサトの服にはアサトの血が付いていたと思うんだけど、それはどうなっちゃったのかなあ。
・傷を引き受けるのは右手、傷を相手に移すのは左手、そういう風に使い分けられているようにずっと見えたんだよね。母親とのシーンでも、傷を移してしまったときに触ったのは右手、僕に返していいよと差出し母親に払いのけられたのは左手(だったと思ったんだけどなあ)。なのに、大事故のシーンでタケオが握ったのはアサトの右手。あそこで「タケオ、手が逆だよ」とセリフが入ったら面白かったのに。(もっとも、左右の区別は私の思い込みだったかもしれません)
・タケオは設定だと何歳ぐらいなんだろう? なまじ原作を生かそうとしたからか、タケオのセリフや態度が肝心なところ子どもっぽいままで外見と合わないったら。あと、いくら寝たきりの父親だって、定期的に看護師が身体を拭くだろうから、傷があったらすぐにバレちゃうと思うんだけどな(でもこれは原作どおりなので)。
・シホが帰ってきたという原作の改変はよかったと思う。主人公たちの年齢を引き上げたことで、恋愛の要素が入ったからね。
・公園を直すところといい、クライマックスの大事故といい、なんであんなに唐突に始まるんだか(笑)。でも、事故のシーンはなかなか良かった(スローモーションで全景を見せたあたり、気合い入ってるなあと)。「笑っちゃった」って感想を見かけたけど、そんなことはなかったよ。アサトに傷を治してもらった人たちが集まって赤ちゃんを救い出し、それでアサトの心が救われるというストーリーの繋がりも良かったし。
しかしアサトくん、そこでなんでいきなり脱ぎ始めるの?ファンサービスか?(笑)、いえいえ原作どおりでした。
・エンドロールが、映画内のカットをつなぎ合わせた絵なのはなんだかテレビ的というか手抜きというか。映画で使われなかったいいカットとか、その後のアサトたちとかにすればよかったのに。
・音楽は、ラストの槇原敬之は素晴らしい。でもそれ以外はイマイチ。もうちょっとBGM無しのシーンがあってもいいと思った。
・とにかく突っ込みどころ満載なんだけど、小池徹平のアサトがあまりに良かったので、DVDになったらもう一回観たいかも。