「スカイ・クロラ」

ここ一週間ほどで原作六冊読破。森さんの小説の中でもかなり思い入れのあるシリーズなので、正直映画は「一応観ておくか」ぐらいのノリで行ったんだけど、うむ、なかなか良かったぞ。
冒頭、スクリーンが一面空になりテーマソングが流れてきたところで、いきなり泣いちまいました。音楽、素晴らしい。
ぐっと抑えた色調、無国籍風の舞台、原作の空気をよく表していたと思う。キャラデザインも、あまり好みの絵ではなかったけど、意外と違和感なく観られたかな。声は、カンナミとミツヤが特に良かった。犬はシェットランドだったら良かったなあ(笑、自分は押井ファンではなく森ファンなので)。二時間の中で物語がきちんと閉じていたのもマル。
CGを駆使して描いた戦闘シーンは迫力あった。爆音、飛行士の興奮や恐怖、映画にするにはこれくらいのリアリティーがないと鑑賞に堪えないのは良く分かるのだが、原作の、美化しすぎなんじゃとも思えるような雲の上の美しい戦闘(小説というより、詩、だもんね)や、戦闘機に乗ることが至上であるかのような絶対的価値観が削られたのは、少し残念。いや、その価値観に同調するわけじゃないんだけど、スカイ・クロラってそういう物語だから。「ダンスしてないじゃん」と思いながら観てました。
クサナギの魅力がいまいち伝わってこなかったなあ。もっともこれは、自分は『ナ・バ・テア』『ダウン・ツ・ヘヴン』あたりを読んでいるから、云えることなのかも。あと、事前のインタビューで監督は、「今の若い人たちに伝えたいことがある」というようなことを云ってたんだけど、それがなんなのか、映画を観た限りではさっぱり伝わってこなかった。
以下、どうでもいい話。
・フーコが全然違うー。
・ササクラが女。
・英語が出てきたのにびっくり。
・空の上ではコードネームで呼ばないの?
・飛行機のそばで煙草を吸うのはやめましょう。引火しそうでコワイよ。
・黒豹ではなく黒猫だし、黒猫の彼をティーチャと呼ぶシーンは原作ではなかったような。
(映画館にて鑑賞)