『名前探しの放課後』

053 辻村深月『名前探しの放課後(上・下)』(講談社
自意識過剰だったりプライドが高かったり、微妙に感情移入しにくい登場人物に加えて、物語が「どうしてこれだけのことを云うのに、こんなに多くのページを使わなきゃならないんだろう?」ってくらい遅々として進まないので、最初は正直しんどかったけど、読み進んでいくうちにどんどん物語世界が愛しく思えてくるから不思議だよなあ。プロローグを読んだ時点で察しはついたけど、さすが綾辻ファンの辻村さん、やってくれました(荒っぽいところがなきにしもあらずですが、伏線はしっかり)。作品自体に、思わずページを前に繰って確認したくなっちゃう魅力があり、さらには他作品へとまたがってる人物もいたりするので、あれもこれも再読したくなっちゃう。なので辻村さん、もう少しエピソードを絞って、コンパクトな本にしていただけるとありがたいです(笑)。文章に力があるから、もっと削ってシャープな小説にしても、イケると思うんだけどなあ(あ、でも今のままがいいっていう人も多いだろうなあ、好みの問題ですねきっと)。