「ガリレオ」 原作VSドラマ

今頃になってようやくドラマを見終わりました。原作を改変した回もかなりあったので、どちらが良かったか、「原作VSドラマ」をやってみようと思います。ものすごーく個人的な印象で適当に書いてますので、ファンの方、気を悪くされたらごめんなさいね。ちなみに、原作は五年前に読みました。ドラマを見終わった後に再読もしました。
まずはドラマの全体的な感想から。
・もし、東野圭吾のエッセイとか自伝を映像化することがあったら、本人役はぜひ北村一輝にお願いしたい。(なんか似てない?雰囲気が)
・物理トリックは映像にすると映えますねえ。
・新人刑事ってこんなに暇なの?(笑) 本部で取り上げない事件を個人的に調べたり、ちょくちょく大学に行ったりする時間的余裕がこんなにあるなんて。そもそも聞き込みは二人一組が原則では。
・でも、相手役に女性を起用した改変は、まあいいんじゃないでしょうか。柴咲コウ、可愛かったし。湯川の扱いにだんだん長けてくるところ(決まり文句を先取りしたり、彼の興味を引きそうな事柄を鼻先にぶら下げるニンジンのごとくぶつけてみたり)とか、どす黒い感情を持て余すところとか、テンポが良くて面白かったー。
・スカッシュ、クライミング、彫刻、ボクシング、アーチェリーに料理、これは福山ファンへのサービス映像か?(笑)
ガリレオ先生がひらめいたときに書き散らす数式、あれを解くと事件の真相に至るんだったらすごいけど、まあ単に集中するときの儀式だよね。一休さんの「ぽくぽくぽく‥チーン」を連想しました(笑)。
・助手っていうのは役職名で、別に湯川先生の助手って意味ではないと思うんですけど。渡辺いっけいの栗林さん、けっこう好きでした。「実に面白くない!」(笑)
・ゼミの生徒に背の低い男の子がいたでしょ、研究室の同期だったSくんにソックリで、いやはや懐かしかったなあ。
帝都大学の外観は京大だよね、講演会聴きに行ったときのことを思い出しました。
・音楽、カッコいい。作曲だけでなく、ギターも福山雅治がやってたの?すごいな。
以下、ネタバレ全開なのでたたみましょう。ドラッグして読んでね。
 
 
 
 
■燃える
探偵ガリレオ』『予知夢』全十話を読んだ中で、一番印象強かったのがこの話でした。原作だと、犯人が朗読やってることは最初分からないじゃないですか、なのでそれが分かったとき「やられたなあ!」と。読み返すとたしかに冒頭、『火星年代記』の引用部分がカギカッコに入ってる。でも私は「読んだ=朗読」だとは思わずに読み進んでいたんで、真相が分かったとき「おお!なるほど」と感心したのでした。一階と二階の住人が入れ替わっていたのにも素直に驚いたし。
と、原作を褒め称えてきましたが、ドラマはさらにその先があったよ。逮捕されたところで終わったんじゃ唐沢寿明をわざわざ起用した意味が‥と思ったら、「42回の殺人未遂」と来ましたか! He-Neレーザーと炭酸ガスレーザーの再現性の違いにも触れられていたし、現場付近の焦げ痕、傷ついた携帯画面、畳の表面、あからさまながらも伏線がちゃんと活きていた。事件後の朗読テープも、原作とは正反対の意味で活用されていたし。弓削のタバコの煙の使い方もうまい。
ということで、「ドラマの勝ち!」

■離脱る(ぬける)
あれっ、平田満だとずっと思って見てたよ(笑)。
これはほぼ原作に忠実。ジンマシンも原作通り(笑)。ただ、柔道の有段者である被害者と背の低い容疑者、なのに死因は‥という最初の時点で気づけない警察はあまりに間抜けすぎでは。原作の“「あの二人は誰かの紹介で見合いをしたんだったな‥」 一瞬後、全員がほぼ同時に立ち上がった。”というシーン、好きだったんだけどなあ。
スニーカーを長靴に替えたのは、より実際の工場らしくてマル。お父さんが絵に手を加えたことは、映像でやっちゃうと一目瞭然すぎるので、これもなくして正解。あと、子役の子がめちゃめちゃ上手くて感心した。蛭子さんも「なんかわけありそうな工場長」って感じでぴったり。アブちゃんはまあ、良かったかな。
プラマイゼロで「引き分け」。

■騒霊ぐ(さわぐ)
おお、これまたかなり原作に忠実。遺産を探して他人同士が一つ屋根の下にずっと暮らすというのは、ちと現実離れした設定だと思うが。広末涼子柴咲コウの女優対決は見ごたえあり。
ドラマには、視聴率が芳しくないと恋愛要素を加味するという裏の手(笑)があるので、第三〜四回あたりまでは湯川と内海が恋愛に発展するかも的な箇所がところどころに見られる。でも結局は、視聴率が良かったのでそれらは次第に消えていく。よかったよかった。
がっぷり四つで、「引き分け」。

■壊死る(くさる)
原作の陳腐な男女の話が、天才対決に変貌。香取慎吾には、沙粧妙子のときのような怪演を期待したんだけど、普通のシンゴくんのまんまで、ちとがっかり。
「貧乏人は風呂で溺れんだよ」のセリフが、最後にちゃんとつながってくるとこは良かったなあ。電話越しに聞こえたベルの音で湯川が気づくところも、なかなか。「僕なら痣も残さない」まあなんてカッコイイ、でもそれって殺人者になれる資質があるってことですか湯川先生(笑)。
個人的にがっかり度が高かったので、僅差で「原作の勝ち」。

■絞殺る(しめる)
娘さん、長野からなんでわざわざ毎回制服で上京するの?
大後寿々花水野美紀が好演。家族だけの物語にしたのは良かった。「捨てられるわけないじゃないですか」なるほどねえ。
原作は、曖昧なアリバイの理由に加えて終わり方もイマイチだったので、「ドラマの勝ち」。

■夢想る(ゆめみる)
ちゃばしらたつこ(爆笑)。
携帯を船の外へ何度も放り投げるシーン、同じことを繰り返しやってるだけじゃ、単なるバカですよ湯川先生(笑)。二、三度やってダメだったら、投げる位置を変えるとか、紐の長さを変えるとか、少しずつ条件を変えて試行錯誤しなくっちゃ、ねえ。「科学者は決して人間嫌いではない。 ニュートンがそうであるように、ガリレオがそうであるように」 「先生がそうであるように」というセリフはとても良かったけど。
ハチの中のモリサキレミは幼い頃の薫だった、というのは、ちと論理が飛躍しすぎでは。薫の子ども時代を演じた子は、目ぢからあってよく似てた。最後の手塚理美は観念するの、早すぎ。ロケ地は良かったですね。
うーん、これも僅差で「原作の勝ち」。

■予知る(しる)
なんてごっついパイプハンガー! 「金に執着する人間には(科学者になるのは)無理です」というセリフは効いていた。現場に携帯を置いたのはそんな理由だったのかい。深田恭子の悪女も、まあまあかな。
原作のねじれたラストがなかなか好きだったんだけど、テツに目覚めた湯川先生も良かった(笑)んで、「引き分け」。

■霊視る(みえる)
黄色いコートで誤認させてアリバイを作るところは原作もドラマも同じ。予定外の人物が部屋にいたというのも同じ。ドラマもそつなくまとまっていたけど、緻密さでは原作が上かな。ということで、「原作の勝ち」。
■爆ぜる + 転写る(うつる)
二つの話を上手くつなげてはいるが、原作の木島は思いっきり改変。久米宏はさすがの存在感だったけど、やっぱ役者的にはもう一歩だったかなあ。本上まなみの使い方も、いまいちもったいない。ゴミ問題と科学者を絡めた辺りは良かったけど、最後のレッドマーキュリーの造形は、なんだあれ〜(苦笑)でした。囚われの内海の持った紙がぺにゃんと折れ曲がって、「あ〜(><。)」というところ、カワイくて好きだなあ。
最終話らしく派手にしてみたようだけど、やっぱ「原作の勝ち」。

 
■(オマケ)容疑者Xの献身
堂々の引き分け。早くDVD、出ないかなあ。