『ラットマン』

060 道尾秀介『ラットマン』(光文社)
うわあ、そういうことだったのか。思い遣り、思い込み、意図せぬ偶然が生み出す誤解。他人の心はこうも分からないものなのだなあ。過去と現在の事件が不思議に重なり合う様も見事だが、著者が自らの体験を元に書いたのであろう、アマチュアバンドの練習風景とライブの、実に活気にあふれたみずみずしい描写がとても良くて、最後まで一気に読まされた。もちろん謎解きの魅力もありますよ。