『終末のフール』

035 伊坂幸太郎『終末のフール』(集英社
読みながら、乙一さんの「SEVEN ROOMS」を思い出していた。迫り来る死は、まったく自分に非のない理不尽なもの。でも描かれているのは、読み手に希望を与えてくれる、美しい人間の姿。これぞフィクションの力、小説ばんざい。
設定も上手いよね。終末を知って混乱を極めた時代を経て、一瞬の凪にも似た小康状態にある日本。怒ったり泣いたりするにもパワーがいるわけで、五年も続けていれば確かに疲れて一休みしたくなるし、こじんまり落ち着くのも、外に感情を出すのが苦手な日本人らしいなと。私はこの設定、きれいごとじゃなく、結構リアルに受け止められたよ。
二ノ宮や苗場といった「ポール」になってくれそうな人物が、特に印象に残った。あ、来月文庫になるのね、また読もうっと。