「重力ピエロ」

原作は四年前に読んだっきりだったのだが、私の中にあった物語の骨子、キャラクター、大好きな台詞やシーンが、どれも完っ璧に再現されていて、うれしくて涙が出た。「春が二階から落ちてきた」で始まり、終わる。そんなところまで原作どおり。きちんと仙台市内でロケしているのも効果的。まあ、家に帰って本を久しぶりに開いたら、削られたエピソードや変更された設定が存外多くてびっくりしたんだけどね(笑)。
そもそもの物語が、絶妙のバランスで成り立っていて。伊坂さんの話って、それ犯罪だろってことがフツーに出てきて、面白いんだけどちょっとなあ‥って思うことがなきにしもあらずなんだけど、この物語に関しては、中心にいる「最強の家族」がほんとに最強で魅力的で、その力強さゆえか、私の中では「あり」なのだ。
加瀬亮は、普通の男の子を演じさせるとほんと、似合うなあ(「それでもボクはやってない」とか「ありふれた奇跡」とか)。岡田将生は、ちょっと台詞回しが平坦だなとは思ったけど、なんかあり得ないくらいカッコいい「春」という人物にピッタリはまっていた。そして、物語の要(と私が思っている)のお父さんを演じた小日向文世。素晴らしいなあ。渡部篤郎も全く悪びれない極悪人がぴったり。欲を云えば、お母さんの勇ましいエピソードがもう少し映像にあっても良かったかな。
言葉は、人を救う。改めてそれを、強く思った。原作が好きな方に、特におススメ(と思ったんだけど、巡回してみると、感想は人それぞれみたい。「原作と違ってガッカリ」って書いてた人もいたし)。
(映画館にて鑑賞 今年の30本目)