『ツナグ』

023 辻村深月『ツナグ』(新潮社)
女性、男性、若い人、年配の人、誰が語り手になっても、彼ら彼女らの心情が自然にこちらに届いてきて、辻村さんの書き手としての力量をまざまざと感じました。ラストの一篇から様々なことが見えてきて、彼の両親の死にまつわることにも「おっ」と思わせる反転があり、ただの「いい小説」で終わらないところも好きだな。ただ「親友の心得」あたりは、材料はいいんだけどその出し方がごちゃごちゃしてて、すっきりとしたカタルシスが得られないのが不満と云えば不満。「使者の心得」も、実はツッコミ出すときりがないんだけど、ミステリじゃないからいいのかなあ。