『ブック・ジャングル』

040 石持浅海『ブック・ジャングル』(文藝春秋
こういう話の舞台に「図書館」を持ってくるところが、ミスマッチというか、その思いつきにまず拍手。次から次へと出てくる緊迫した局面、主人公らと犯人の駆け引きは、すごく考えられていて面白かった。地獄の黙示録とは、なんとピッタリなBGM。犯人の正体は推測通り。熊さん視点の部分が、後半少なくなっちゃったのは残念。
でもひとこと云っていい? 聖典っていうほど好きな本なら、買えよ。
でもってここからはネタばらしになるので、

 
 
 
 
 
(ここから→)本棚の立ち並ぶ図書館内でラジコンヘリ(しかも殺傷能力あり)に次々襲われ、いきなり人が死んで、見ず知らず同士の男女が必死に知恵を絞って活路を見出す、って設定は面白いと思うのよ。思うんだけど、主犯のヤツがなんというかあまりにも「物語に合わせて創られた人格」って感じで、ちっとも納得できなかったのね。図書館の仕事一筋なイメージと、仕事場で女性を抱いたり娘を殺そうとしたりするイメージが、あまりにも乖離しすぎてて。狂人には狂人の論理があるって云うじゃない?もう少し読者を納得させられる犯人像を創ってほしかったなあ。それからラストも、大好きな父親に殺されかけるわ、親友は父親と関係持ってたことが分かるわ、それであのぬるい大団円?えーー‥という印象。主人公の専門が思わぬところで役に立つのは良かったけど、細かいところでちょこちょこ(出生の秘密(?)を普通に知ってる娘とその友だちって、なんだかなあとか)引っかかって、存分に楽しめなかった。
ま、元々、石持作品って今までもそういうとこあったのよね。展開にはすごくしびれるんだけど、根幹の動機が「えー、そんなことであんなことしちゃうの?」みたいな。相性が悪いのかなあ。
(←ここまで)