『チヨ子』

041 宮部みゆき『チヨ子』(光文社文庫
いきなりの文庫化に、拍手!
庶民を書かせると本当にうまいなあ。噂好きのうっとうしいおばちゃんとか、なかなか本題に入ってくれない依頼人とか。
それぞれの短編の感想は、多少ネタばらしを含むので↓

「雪娘」二十年もの間、全くぶれないこの主人公、人間離れしててコワいや。
「オモチャ」おじいさんに見つめられたお店は、なくなっちゃう。だからクミコや父の方は見なかった(いなくなってほしくないから)んだと思ったのに、最後の1ページであっさり裏切られ。あれー?
「チヨ子」発想も語り口もいいんだけど、なんで五年も放置されてたの?(バーゲンはもっと頻繁にあるでしょ)とか、最初にかぶった田中さんは見えなかったの?とか、いささか不満も。そして、着ぐるみや玩具を着ている人はいい人で、着ていない人は‥という分け方は、いくらなんでも安直すぎでは。
「いしまくら」話の入り口が長過ぎ。題名も、今ひとつ活きていない気がする。自転車二人乗りのエピソードは輝いていた。
「聖痕」ものすごく重い内容、でも途中までは一気読みだった。救世主のあたりから「あれ?」となり、ユダの正体に「えー」となり。結末も救いがないけど、ずっしりと心には残った。
 でも、ネットのこういうのって、燃え上がるとすごいけど、実は廃れるのも早いんだよねー。