『STEP!STEP!STEP!高橋大輔』

原真子『STEP!STEP!STEP!高橋大輔』(日経ビジネス人文庫
うーん‥写真はいいんだけど文章がなあ。時系列があっちこっち飛んで、コアなファン以外には分かりにくいと思われる箇所がいくつも。主観をはさみすぎるのもいただけないし、ときおり混じるくだけた物云いも(親しみやすさを狙ったのかもしれないが)取材の信頼性を下げるのでやめたほうがいいと思います。なにを期待して読者がこの手の本を手に取るのか、よく考えましょう(筆者自身に興味があるのではないのだから)。なるほどと改めて分かる部分もたくさんあったのに、もったいないなあと。

ここからは、本の感想ではなく自分の話。
フィギュアスケートは、二年前まではオリンピックのときテレビで見るぐらいで、すごく興味があるというほどではありませんでした。技術点より芸術点の高い選手が好きで、長野オリンピックのキャンデロロ「ダルタニアン」がずっと、自分の中でのベスト・パフォーマンス。日本の選手は、技術力はあっても表情に乏しい、そんなふうにずっと思ってました。
ところがどっこい、バンクーバーオリンピック。たまたま生放送をテレビで見てたら、高橋大輔の「eye」ですよ! 不敵な笑みさえ浮かべて表情で滑り踊る彼の演技にもう、釘付け。こんなに表情豊かに滑る日本人選手がいたんだーと心底、びっくりでした。四年前はただのチャラそうな男の子だったのに、うわあうわあ。フリーも、練習の映像を見たときは、他の選手がピシッとした衣装なのに彼ひとりだけ幼稚園のおゆうぎ会みたい(おいおい)で、あれれー‥と思ってたらあの演技! 冒頭の四回転に失敗したのは四年前と同じなのにね。演技が終わったときの会心のガッツポーズと「全ての道はここ、バンクーバーに通じていた!」に感動しまくりでした。あと、他の選手は曲が変わってもさほど滑りは変わらなく見えるのに、高橋選手はSP、FP、EX、曲が変わると印象ががらっと変わるのがまたすごいなあと。
で、それから男子フィギュアのテレビ放送は必ず録画。2011年世界選手権の靴のアクシデントあたりで、少し熱が冷めたかな(だって、シーズン中は同じプログラムを滑るわけだし、毎回見なくてもいいかなと)と思いきや、去年のNHK杯SPの神演技(四回転は入ってなかったけど、滑りはとにかく素人にも分かるぐらいに凄かった)を見ちゃって、再燃(笑)、今に至ります。四回転はたしかに必要かもしれないけれど、どうか怪我をしませんように。国内も若手が育ってきていろいろ厳しいでしょうが、なんとかソチに行ってほしいなあ。