「深呼吸の必要」

時間の流れ方がいかにも映画的。登場人物たちが背負っている過去の説明を最低限にとどめ、あとはひたすらさとうきびを刈っているだけ。でもそれが実にいいんだよね。
若者たちが抱えるそれぞれの事情。毎年都会の若者の手を借りなければ、きびの収穫もままならない老夫婦。大森南朋演じる田所の仕事も、一見、自分のやりたいことをやり、農家の人々に感謝され、いいこと尽しのように見えるが、実は若さと健康という前提がなければ成り立たない不安定なものだということ。しかしそれらを映画は声高には語らない。あくまで観客にゆだね、スクリーンには沖縄の突き抜けるような自然と労働の汗を映し出す。なんとすがすがしいことか。
深呼吸の必要」この妙に耳に引っ掛かる題名と、水泳のエピソードもよかった。香里奈がまたいいんだよね。彼女演じるひなみは、ごくごく普通の女の子で、主役というよりは全体の潤滑油のような役割なんだけど、素直で前向きで、うん、すごく良かった。
最初の写真はラストに絶対絡んでくると思っていたが、写真そのものではなく声できましたか。うわあ、やられたなあ。

(DVDで鑑賞)