『退出ゲーム』

015 初野晴『退出ゲーム』(角川書店
短篇集。表題作が推理作家協会賞の候補に挙がっていたので、大いに期待して読んだのだが、うわあ、これはすごいぞ。特に表題作と最後の一篇に感心した。
本格ミステリ(といっても、この本の場合は手がかりがすべて読者に与えられるわけではないんだけど、それはともかく)ってとかく、閉じた空間の中で細かいところをつつくような物語になりがちなのに、これは学校という舞台を軽々と越え、海の向こうまで行ってしまった。ドタバタも相変わらず面白いし、一方で社会性も充分にあり。ま、著者が意図したであろうことを100%読者に伝えるには、もちょっと文章や構成に工夫がいるかもしれないけど、とにかく堪能させてもらいました。