「7つの贈り物」

いやもう、観終わったら悲しいのなんの、地面にめり込むほど落ち込んでしまいました。いい映画でしたけどね。ウィル・スミス、良かった〜。この方曰く「銃をブッ放したり地球を異星人から救ったりしない、とてつもなく地味なウィル・スミスを非常に魅力的に撮り上げている」、うんうん、私もそう思いました。
この先、結末に触れていますので、未見の方はご注意を。(3/13、追記あり
(映画館にて鑑賞)
 
 
 
(ここから→)冒頭で先を暗示するワンカットがあるものの、ベンの行動の意味するところが なっかなか分からなかいので、中盤やや集中が途切れたことも。でも、「人生を7秒で叩き潰した」の意味がはっきりし、彼の「贈り物」とは何かが分かったときはもう、‥もう(泣)。自分の不注意で起こしてしまった事故が、最愛の人を奪っただけでなく、他の人をも巻き添えにしてしまった。あの時点で彼は、身体は助かったけれど、心は死んでしまったんだろうなあ。クラゲとかバスタブとか、思い返すと悲しくて。冒頭のあのシーン、着ている服がサーモンピンクだよ、彼女にもらった服だよ、うう(><。)。
兄弟も友人も彼を救うことが出来なかった。生きて償うという道を取れなかったベン(本当はティムだけど)が可哀相で可哀相で。心臓を彼からもらったのだと知って、エミリーはこれからどうやって生きていけばよいのか。いや、生きていかなくちゃならないんだけど、辛いよなあ。
(追記:「7つ」もあったっけ?と最初分からなくて。片肺、肝臓、家、心臓角膜、あと2つは‥と観終わってから検索して判明。男の子への骨髄移植と、ホッケーチームの監督への腎臓提供だったのね。
他の人の感想をいくつか読んだけど、けっこう辛らつなものもあって。でもそれは当然というか、宣伝文句の「感動作」というのがそもそも違うと思うんだよね。「感動」というよりはむしろ、「勘違い男の大暴走」(おいおい、それは云い過ぎだろう)の話だったんじゃないかなあ。
善人悪人の判断も彼一人による恣意的なもので、自己満足でしかないとも云えるし、心臓の提供を待っていたもっと優先順位の高い人たちを飛び越していいのかとか、事故で亡くなった人の遺族への償いを一生かけてするべきではないのかとか(一家みんな死んじゃったからできないとか?)、たしかにいろいろ考えもしたんだけど。でも道徳教科書じゃないんだから、これは「こういう男がいました。あなたはどう思いますか」と疑問を投げかける作品であって、これはこれでいいと私は思ったよ。
赤の他人を劇的に救う、相手にとって彼は(事情を知らずにいれば)まるで生き神様。とっても尊い行為なはずなのに、それをしているベンがちっとも幸せそうじゃないんだよね。辛くて悲しくて寂しくて、それをウィル・スミスはとてもよく体現していた。戦争やらテロやらで、何十何百の命を奪って平気な人間がいる一方、たった7人(7人も、とも云えるけど)の命を奪ってしまったことで、ぽっきり折れてしまった男もいる。こういう映画が作られたことはある意味正しいことなんじゃないか、そう思いました。
(←ここまで)