『山魔の如き嗤うもの』

023 三津田信三『山魔の如き嗤うもの』(原書房
最初の100ページは苦行(笑)、でもその後は、一章が短くトントン物語が進むので、すらすら読み進めることができた。謎が二ページにまたがって列挙される例の部分は、毎度のことながら圧巻。もちろん全部は分からなかったけど、「これはこうじゃないかなあ」と私にも推理できた部分があったり、「ここは不自然、アヤしいなあ」と思ったところがちゃんと謎を解く鍵になってたり、マニアだけでなく幅広い読者に向けて親切に書いてくれたんだなと感じた。
ただ、読み易さを心掛けるあまり、文体が軽いというか、出来事を羅列したレポートみたいというか。「あのー」「そのー」などの「ー」表記も、昭和中期の田舎という舞台設定にそぐわないし。もっともっと、文章に磨きをかけていただけると嬉しいな。

前回の『首無の〜』ほどにはのめりこめなかったのは、早々と現場に探偵&警察が乗り込んでいるのに、ちっとも事件防止に役立ってない(笑)からだったのかも。三つ目の事件も、「これは「分ける」、つまり四つ目で、まだ発見されていない「籠る」を表す三つ目の死体があるのでは」と考えないか?普通は。