『星町の物語』

021 太田忠司『星町の物語』(理論社
素晴らしいっ。
星新一ショートショート大好きの自分が太田さんの物語と初めて出会ったのは、『ショートショートの広場』に掲載された「帰郷」。このときは雰囲気重視の一編という感じで、正直ピンと来なかったのだが、あれから25年。今回の本は、笑いあり涙あり恐怖あり、非常にバラエティーに富んでいて、それでいて全体を通して読むと「星町」をキーワードに統一感も感じられる。文章も、時間をかけじっくり言葉を精選したことが伺えてすごくいいし、シンプルだけど凝ってるイラストもぴったり(ひとつひとつの物語に合わせたイラストがつながって、地図になっているんだよ。細かくて、老眼にはちと見辛かったが(笑))。
珠玉のショートショート集ですよこれは。星新一を愛したすべての人たちに、そしてショートショートに馴染みのない若い人たちにも、猛烈にお薦めしたい。単行本、厚さ1cmほどで1300円という、ほいっと買うにはちと敷居の高い本なので、こういうのこそぜひぜひ「本屋さん秘密結社」でプッシュしてほしいなあ。

初読時、特に印象に残ったのは「標」「モニター」「配線」「虹売り」「写真」「球根」あたりかな。