『廃電車レクイエム』

010 丸田祥三『廃電車レクイエム』(岩波書店
写真+エッセイ集。『赤い月、廃駅の上に』の表紙がとても気になったので、写真を撮られた丸田さんの本を手に取ってみたのですが、いやーこれびっくりしました。てっきり、プロの写真家が各地の廃電車を訪ねて写真を撮り歩いた記録、だと思ったら違うんですよ。なんと著者は、小学生の頃からなぜか廃電車に心惹かれ、子どもの頃からずーっと日本各地の廃電車を撮っていたという。既に無くなってしまった車両も数多く、とても貴重な写真集です。
十歳の子どもの写真と侮ることなかれ、きちんと対象と向き合った堂々たるもので、感心。戦中、戦後、高度成長、バブル、そしてバブル崩壊という、激動の昭和から平成にかけての時代の記録ともいえる、エッセイも秀逸です。いいもの読みました。